DMは開示請求をできますか?DMで誹謗中傷された場合の対処法を解説!

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DMは開示請求をできますか?DMで誹謗中傷された場合の対処法を解説!

DMの危険性とは?はじめに

XやInstagramには、相手にダイレクトメッセージ(DM)を送れる機能があります。このDMを用いて、嫌がらせをうけたり誹謗中傷などされた場合、相手を特定したり、慰謝料を請求することができるのでしょうか?

本記事では、DMで悪口をしつこく送ってくる相手を特定することができるのか、相手に慰謝料請求できるのかなどについて解説します。

匿名の相手を特定するためには?

匿名の相手を特定する方法として、「発信者情報開示請求」という手続があります。

発信者情報開示請求(プロバイダ責任制限法第5条)とは、インターネット上で誹謗中傷などの投稿を行った発信者の氏名や住所などの個人情報を開示するよう請求する手続きで、アクセスプロバイダに対する訴訟という形で行われます。

発信者情報開示請求が認められると、捨て垢などの匿名のユーザーであっても投稿者の身元を確認することができます。

発信者情報開示請求をしても、必ずしも情報の開示が認められるわけではありません。発信者情報の開示を受けるためには、次の要件をすべて満たすことが必要です。

発信者情報開示請求の要件(プロバイダ責任制限法第5条)

  • 「特定電気通信」による情報の流通がなされた場合であること(=不特定の者に受信されることを目的としたインターネット上の投稿であること)
  • 当該情報の流通によって自己の権利が侵害されたこと(権利侵害の明白性)
  • 発信者情報の開示を受ける正当な理由が存在すること
  • 発信者情報の開示を求める相手方が「開示関係役務提供者」に該当すること(=開示請求の相手方となるプロバイダであること)
  • 開示を求める情報が「発信者情報」に該当すること
  • 上記発信者情報を開示関係役務提供者が「保有」していること

発信者情報開示請求により、投稿者の氏名や住所が開示された場合、次に投稿者に対して直接損害賠償請求などを行います。

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弁護士による発信者情報開示請求対応

DMについて発信者情報開示請求は認められるのか

DMについては、発信者情報開示請求の対象外となります。なぜなら、プロバイダ責任制限法における発信者情報開示制度の対象は、公開の投稿(ポストやアカウントアイコンなど)に限られているからです

「特定電気通信」(プロバイダ責任制限法第2条第1号)の定義が、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」とされています。「不特定の者によって受信される」とは、投稿の受け手(閲覧者)が特定されていないということ、つまり公開されていて誰でも見ることができる投稿のことを指します。そのため、DMなどの1対1のメッセージの場合は、不特定の人に対するものではないので、発信者情報開示請求の対象外となります。

例外的にDMについて発信者情報開示請求ができるケース

このように、DMは、XやInstagramで公開された投稿とは異なり、不特定多数の人が見ることはできません。しかし、相手がDMの内容をスクリーンショットが投稿するなど、DMの内容を不特定の人が見ることができる形で投稿された場合には、発信者情報開示請求の対象となり、相手方の情報を取得することができる場合があります。

誹謗中傷にあたるDMのスクリーンショットを投稿し、発信者情報開示請求が認められた裁判例はまだありませんが、DMで送った画像がTwitterに投稿され、かかる投稿について発信者情報開示請求が認められた判例があります。

裁判例:東京地裁平成29年12月15日判決(Westlaw Japan文献番号:2017WLJPCA12158016)

本件は、原告が、自宅で撮影した自分の全裸画像を知人にダイレクトメールで送信したところ、「D」というTwitterのアカウントで、原告の全裸画像が投稿されてしまったことから、プライバシー権が侵害されたとして、発信者情報の開示を求めた事案です。

裁判所は、「本件投稿は,原告が知人にダイレクトメールで送信した原告の全裸画像である本件画像を不特定多数が閲覧できる公開の形で投稿したものであり,その内容からすれば,原告のプライバシー権を侵害するものであることは明らかである。
また,本件画像は,一私人にすぎない原告の全裸画像であり,社会の正当な関心事であるとはいえず,本件投稿をする社会的利益は認め難く,本件投稿に違法性阻却事由を認めることができないのは明らかである。
したがって,本件投稿により原告のプライバシー権が侵害されたことは明らかであり,「侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかである」(プロバイダ責任制限法(改正前)4条1項1号)と認められる。」として、発信者情報開示請求を認容しました。

このように、DMでのやりとりであったとしても、DMの内容が投稿された場合、当該投稿に対して発信者情報開示請求が認められる場合があります。

DMで誹謗中傷を送ってくる相手に慰謝料請求することはできるか

(1)ネットで誹謗中傷されたとき、慰謝料が請求できる根拠は、民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求です。この損害賠償請求を行うためには、誹謗中傷により、自分の権利が侵害されていることが必要です。ネット上の誹謗中傷の多くで問題になる権利侵害は、名誉毀損、侮辱罪です。

仮に、XのポストやInstagramの投稿など、不特定多数の人の目に触れる形で誹謗中傷をされた場合には、その内容が名誉棄損や侮辱などに該当すれば、慰謝料を請求することができます。これは、名誉棄損や侮辱が成立するために必要な要件である「公然性」が認められるためです。

これに対し、DMの場合は、基本的に1対1のやり取りになり、公然性がありませんので、名誉棄損や侮辱には該当しません。

そのため、DMでの誹謗中傷の場合は、慰謝料請求が難しいといえます。

(2)ただ、拒否しているにもかかわらず、連日DMが送られるなどの被害がある場合、「つきまとい等」(ストーカー行為等の規制等に関する法律第2条)にあたり、この「つきまとい等」の被害の大きさによっては「ストーカー行為」(同条4項)にあたるとして、相手に1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が処される(同法18条)可能性があります。

参考:ストーカー等の規制等に関する法律

第二条 この法律において「つきまとい等」とは、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすることをいう。

1項5号 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。

4項 この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(第一項第一号から第四号まで及び第五号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)又は位置情報無承諾取得等を反復してすることをいう。

また、DMの内容が、「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨」の告知であり、それが人を畏怖させるに足りる程度である場合には、脅迫罪(刑法222条)にあたる可能性があります。

このように、DMが脅迫やストーカー規制法違反に当たる場合には、刑事告訴をすることができます。警察の捜査により加害者が特定できた場合、相手に慰謝料を請求できる可能性があります。

最後に

このように、ダイレクトメッセージで誹謗中傷を受けた場合、基本的には発信者情報開示請求や損害賠償請求をするのは難しいといえます。

DMで嫌がらせや誹謗中傷を受けた場合には、まずはDMが送られてこないように、相手のアカウントをブロックするなどの対応をおすすめします。

相手のアカウントからのDMを拒否する設定やブロックを行ったのにも関わらず、アカウントを変えてしつこく嫌がらせをしてきたり、相手がDMの内容が公開したような場合には、法的措置が採れる可能性があります。是非弁護士にご相談ください。

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InstagramでのDMやコメントにおける誹謗中傷について弁護士が解説

Last Updated on 2025年1月9日 by kakikomi.iclaw

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    この記事の執筆者:弁護士法人稲葉セントラル法律事務所
    法律事務所でも誹謗中傷トラブルに遭うケースがありますが、弁護士として対応方法は分かっているものの、非常に大きなストレスを感じました。依頼者様への誹謗中傷の書込みを精査し対応する中、今でも誹謗中傷されたことに対し苦々しい思いを抱きます。この想いを抱く度、依頼者の方はもっと苦しんでいることを肌で感じ、なんとか今よりも良い状態にしよう、会社に損害が発生しないようにベストを尽くそうと強く思います。弊所では、これまでネット上の誹謗中傷問題に力を入れ、数多くの事件を解決して参りました。中でも、法人のお客様からのご依頼が多く、法人に対する誹謗中傷問題については、経験と問題解決のノウハウに強みを持っております。私たちは、投稿の削除に限らず、削除が難しい案件についても改善のため挑戦いたします。皆さまのストレスを少しでも減らすため、最善の解決方法を考えサポートいたします。