インターネット上の情報の削除は困難とされがちです。特に、過去の犯罪記録の削除は一層の難易度があると感じられることでしょう。また多くの人々は、一度公開された情報がインターネット上に永遠に残ると思い込んでいます。
しかし、条件が揃えば、法律を用いて適切な手続きを踏むことで、情報の修正や削除が可能です。
この記事では、ネット上の逮捕歴や犯罪歴の削除の方法や弁護士への依頼するメリットを中心に詳しく解説します。
1. 犯罪者だから、犯罪歴を世間に知られても仕方ない?
1-1 犯罪歴は法律上どのように考えられているのか
自身の犯罪歴というのは、公にされ続けていても仕方ないものなのでしょうか。
これについては、法的には、プライバシー権、または、「新しく形成している社会生活の平穏を害されその更生を妨げられない利益」として裁判例上保護されていることが分かります。
そして、つい最近のことですが、最高裁の判決において、「犯罪事実に関する記事について、削除を求めることができるか否かは、本件事実の性質及び内容、本件各ツイートによって本件事実が伝達される範囲と上告人が被る具体的被害の程度、上告人の社会的地位や影響力、本件各ツイートの目的や意義、本件各ツイートがされた時の社会的状況とその後の変化等、本件事実を公表されない法的利益が本件各ツイートを一般の閲覧に供し続ける理由に優越する場合には、本件各ツイートの削除を求めることができるものと解するのが相当である。」と判示されました。つまり、犯罪歴であっても、プライバシー権や更生を妨げられない利益を盾に、投稿を削除することができるのです。
1-2 犯罪歴は一生背負わなければならないのか
犯罪歴といっても、逮捕されただけ、あるいは、在宅で捜査を受け書類送検されただけで、有罪判決を受けていない(いわゆる前歴)ケースもあれば、有罪判決を受けてしまった(いわゆる前科)ケースもあります。
この点、有罪判決を受け、前科がついたとしても、刑法上、「懲役や禁錮の刑」であれば、刑期満了から10年、「罰金刑」であれば、納付後から5年間、何ら犯罪等なく経過すれば、「刑の言渡しは、効力を失う。」とされています。
この「効力を失う。」というのは、前科がなくなり、国家資格を受けられるなどの資格制限が回復することを意味します。つまり、法律上、一定の年数が経過すれば、社会生活に復帰することが出来た、更生することができた、と扱われるものと考えていただければ結構です。※1
そのため、そういった歴があること自体は一生背負わなければならないものではありません。
また、有罪判決を受けていない、前歴のケースでは、国家資格の制限に直ちに抵触することはありません。そのため、有罪判決を受けたケースより、投稿記事の削除が認められやすくなる、ということです。
※1もちろん年数が経過しても警察、検察庁でそのような歴があったということは残り、それを前提に捜査を受けることになります。
2. 犯罪歴・逮捕歴の記録削除の基本的なステップ
2-1 ネット記事やSNSの管理者に対する任意の削除依頼
ツイッター等のSNS、ブログ記事等に逮捕歴や犯罪歴について記載されていることを確認したら、それぞれの管理サイトに対して、お問い合わせフォームなどから削除依頼を行います。多くの管理サイトに記事削除依頼の申込みフォームが掲載されておりますので、その流れにのっとって対応をしていきます。また、投稿者が「この人だ」と証拠をもって特定できるような場合は、当該投稿者に対して直接交渉し、記事を削除してもらうよう依頼を行うことも考えられます。この場合には、逆に投稿者を刺激してしまい、更に不要な記事を記載されてしまったり、人違いのおそれもあるため、弁護士に依頼することをおすすめいたします。
2-2 法的手続きの検討
もし上記手続きで削除されない場合は、裁判所に投稿記事削除を求める仮処分等の申立てを行います。
この手続きは、専門性のある法律的知識を必要とするため、これらの手続きに精通した弁護士を利用することをおすすめします。
具体的なメリットと役割については次章で説明します。
3. 弁護士に依頼するメリット
3-1 弁護士ができること
弁護士は法律の専門家であり、あなたの状況を評価し、最適な手続きをアドバイスします。
特に犯罪歴の削除を申し立てるための手続きは、通常、複数の書類の作成と提出を伴います。上述した裁判例に則った事情を、証拠と共に細やかに説明する作業が必要になります。
弁護士はこれらの手続きを適切にハンドリングし、必要な書類を正確に準備することができます。その結果、あなたは難解な法的プロセスから解放され、時間とエネルギーを節約することができます。
3-2 弊所弁護士が心掛けていること~共に歩む~
最初のステップとして、弁護士との相談を行います。ここでは、あなたの状況を詳しく共有し、削除を希望する情報について詳細を把握します。弁護士はその情報をもとに、具体的な法的手段や戦略を提案します。ここでは、あなたの状況をどこまで説明して削除依頼を行うのか(投稿者があなたの現状を知ることで、かえって刺激するおそれもあるため)など、細やかに書面の内容を作り上げ、共有し、共に事件を処理していきます。また、投稿者によっては、何か信条をもって記事を投稿していることもあり(例:公務員の犯罪は絶対に許さない)、検索の仕方によっては削除申請をしない方が妥当と思われるケースもあることから、投稿されているサイトを個別に確認し、優先順位をつけるなどして対応を行っています。
削除申請を実行した後は、申請の結果を弁護士と共にフォローアップします。その結果によっては、更なる法的手続きを取る方が良いのか、取るとして単に削除だけを求めるのかなど、相談の上で次のステップに移ります。
4. まとめ
ネットに過去の逮捕歴や犯罪歴などがネットニュースやSNSで晒されてしまった時は削除方法について理解することが大切です。
稲葉セントラル法律事務所では過去の逮捕歴や犯罪歴などの削除について法的手続きや交渉のサポートを行なっております。専門的な知識と経験を活かして、問題解決に向けた適切なアドバイスを提供します。
見積もり依頼は無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。
Last Updated on 2024年7月4日 by kakikomi.iclaw
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この記事の執筆者:弁護士法人稲葉セントラル法律事務所 法律事務所でも誹謗中傷トラブルに遭うケースがありますが、弁護士として対応方法は分かっているものの、非常に大きなストレスを感じました。依頼者様への誹謗中傷の書込みを精査し対応する中、今でも誹謗中傷されたことに対し苦々しい思いを抱きます。この想いを抱く度、依頼者の方はもっと苦しんでいることを肌で感じ、なんとか今よりも良い状態にしよう、会社に損害が発生しないようにベストを尽くそうと強く思います。弊所では、これまでネット上の誹謗中傷問題に力を入れ、数多くの事件を解決して参りました。中でも、法人のお客様からのご依頼が多く、法人に対する誹謗中傷問題については、経験と問題解決のノウハウに強みを持っております。私たちは、投稿の削除に限らず、削除が難しい案件についても改善のため挑戦いたします。皆さまのストレスを少しでも減らすため、最善の解決方法を考えサポートいたします。 |