インターネット上での風評被害は、企業にとって深刻な問題です。SNSや掲示板での匿名の書き込みが拡散すると、ブランドイメージや信頼性に大きなダメージを与え、業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。
本記事では、風評被害が発生した際の初期対応から法的手続き、さらに長期的な予防策について詳しく解説します。
弁護士の助言を交えながら、企業が取るべき具体的な対策を紹介し、迅速かつ効果的に問題に対処する方法を探ります。風評被害に対する備えを強化し、企業の信用を守り抜くためのガイドラインをお届けします。
1.オンライン誹謗中傷発生時の初期対応
1-1.事実確認と初期の評価
オンライン誹謗中傷が発生した際、最初に行うべきは事実確認と初期の評価です。企業は、問題の書き込みがどのような内容で、どのような影響を及ぼしているのかを迅速に把握する必要があります。具体的には、以下の手順が有効です。
①証拠の保存
問題の書き込みをスクリーンショットで保存し、日付やURLなどの情報を記録します。
②内容の検討
書き込みが誹謗中傷に該当するか、名誉毀損やプライバシー侵害の可能性があるかを検討します。この判断は、企業の法務部門や専門の弁護士と連携して行うことが望ましいです。
③影響の確認
書き込みが企業の評判、売上、従業員の士気にどのような影響を与えているかを分析します。
この初期段階での適切な対応が、その後の法的措置やSNS削除請求の成功に繋がります。
事実確認と初期評価を迅速かつ的確に行うことで、問題の拡大を防ぎ、企業のブランドイメージを守ることができます。
1-2.内部報告ルートと初動チームの設置
オンライン誹謗中傷が発生した場合、企業内での迅速な対応が求められます。そのためには、内部報告ルートの確立と初動チームの設置が不可欠です。
・報告ルートの確立
社員が問題の書き込みを発見した場合、どこに報告すべきかを明確にします。通常、法務部門や危機管理部門が窓口となります。
・初動チームの設置
迅速な対応を行うために、法務、広報、ITの専門家からなる初動チームを設置します。このチームは、事実確認、影響評価、削除依頼の実施など、初期対応の全てを担当します。
・役割の明確化
各メンバーの役割と責任を明確にし、迅速な対応を行える体制を整えます。
初動チームは、企業が誹謗中傷に対する迅速かつ効果的な対応を行うための中核となります。
内部報告ルートの明確化と初動チームの設置により、問題発生時の混乱を最小限に抑え、適切な対応を迅速に行うことが可能となります。
1-3.SNSへの削除請求と緊急対応の手順
SNS上での誹謗中傷が発生した場合、迅速に削除を求めることが重要です。SNSへの削除請求と緊急対応の手順を以下に示します。
①削除依頼の準備
問題の書き込みのスクリーンショット、投稿のURL、投稿者の情報など、削除依頼に必要な証拠を収集します。
②SNSプラットフォームへの削除依頼
各SNSの削除ポリシーに基づき、正式な削除依頼を提出します。特に、FacebookやX、Instagramなどの主要なSNSには、誹謗中傷コンテンツに対する専用の報告フォームがあります。
③法的手段の検討
SNS側が削除に応じない場合、発信者情報開示請求や仮処分の手続きを検討します。弁護士に相談し、法的手段を講じることが必要です。
企業がSNSへの削除請求を適切に行うことで、誹謗中傷の拡散を防ぎ、被害を最小限に抑えることができます。また、削除依頼に対する迅速な対応が、企業の信頼性とブランドイメージを維持するために重要です。
2.書き込んだ人を特定できますか?
2-1.発信者情報の開示請求と収集
誹謗中傷の発信者を特定するためには、発信者情報の開示請求が必要です。以下はその具体的な手順です。
①弁護士への相談
発信者情報開示請求を行う前に、専門の弁護士に相談し、法的助言をもらいます。
②開示請求の準備
発信者情報開示請求に必要な証拠を収集し、書類を準備します。具体的には、誹謗中傷の内容、投稿のスクリーンショット、被害の内容などが含まれます。
③プロバイダーへの請求
インターネットサービスプロバイダー(ISP)やSNSプラットフォームに対して、発信者情報の開示を請求します。この手続きには、裁判所の命令が必要な場合があります。
④情報の収集と確認
開示された情報をもとに、発信者の特定を行います。必要に応じて、さらに詳細な調査を行い、法的手続きに備えます。
発信者情報の開示請求は、誹謗中傷の発信者を特定し、法的措置を講じるための重要なステップです。企業は、適切な手続きを経て、迅速に対応することが求められます。
2-2.民事訴訟と刑事訴訟の選択肢と違い
誹謗中傷に対する法的措置として、民事訴訟と刑事訴訟のどちらを選択するかは重要な決定です。以下にその違いと選択肢を説明します。
・民事訴訟の特徴
民事訴訟は、被害者が発信者に対して損害賠償を請求する手段です。目的は、被害の補償と名誉回復です。民事訴訟では、被害者自身が原告となり、証拠を提示し、裁判所に訴えることが必要です。
・刑事訴訟の特徴
刑事訴訟は、誹謗中傷行為が刑法に触れる場合に、警察や検察が発信者を起訴する手段です。目的は、発信者に対する刑罰の適用です。被害者は告訴することができますが、訴追は公的機関が行います。
・選択の基準
民事訴訟は、被害者が具体的な損害を受けた場合に適しており、刑事訴訟は、発信者の行為が重大な犯罪行為に該当する場合に適しています。企業は、弁護士と相談し、事案の性質に応じて適切な法的措置を選択します。
民事訴訟と刑事訴訟の違いを理解し、適切な法的手続きを選ぶことが、企業が誹謗中傷に対して効果的に対応するために重要です。
2-3.名誉毀損や業務妨害への具体的手続き
名誉毀損や業務妨害に対する具体的な法的手続きは、企業の信用を守るために不可欠です。以下にその詳細を示します。
・証拠収集
名誉毀損や業務妨害の証拠を徹底的に収集します。具体的には、問題の書き込みや投稿のスクリーンショット、被害を証明する資料などです。
・弁護士との連携
専門の弁護士と連携し、法的なアドバイスをもらいながら手続きを進めます。弁護士は、訴訟戦略や必要な法的書類の作成をサポートします。
・法的手続きの開始
証拠を基に、民事訴訟や刑事告訴を行います。民事訴訟では、損害賠償請求を行い、刑事告訴では、発信者に対する刑事罰を求めます。
・仮処分申請
緊急性が高い場合、仮処分を申請し、即時の書き込み削除や発信者情報の開示を求めることができます。
名誉毀損や業務妨害に対する具体的な手続きを適切に行うことで、企業は迅速に問題を解決し、信頼を回復することが可能です。
3弁護士による風評被害の予防と長期的な対策
3-1.社内ポリシーとガイドラインの強化
企業が風評被害を予防するためには、弁護士の助言を得た上で社内ポリシーとガイドラインを強化することが不可欠です。以下にその具体的な方法を示します。
・ポリシーの策定
弁護士と協力して、SNS利用に関する社内ポリシーを策定し、全社員に周知徹底します。これには、誹謗中傷行為の禁止、情報漏洩防止、適切なコミュニケーションの推奨などが含まれます。
・ガイドラインの作成
弁護士の助言を受けながら、具体的な行動指針を示すガイドラインを作成し、社員が日常業務で参考にできるようにします。ガイドラインには、SNS投稿のルール、緊急時の対応手順、報告ルートなどが含まれます。
・定期的な見直し
ポリシーやガイドラインを定期的に見直し、最新の法規制や企業の状況に応じて更新します。弁護士の助言を受けることで、常に適切な対応ができるようにします。
社内ポリシーとガイドラインの強化は、企業全体の意識向上と共に、風評被害の予防に効果的です。
3-2.従業員向け研修と教育プログラムの導入
企業が風評被害を予防するためには、従業員向けの研修と教育プログラムの導入が重要です。以下にその具体的な方法を示します。
・研修プログラムの作成
弁護士の協力を得て、風評被害やプライバシー侵害に関する法律知識、SNS利用のマナー、危機管理対応、コンプライアンスなどを含む研修プログラムを設計します。
・定期的な研修の実施
全社員を対象に、定期的な研修を実施します。研修では、具体的な事例を用いたシミュレーションやグループディスカッションを取り入れることで、実践的な知識を身につけさせます。
・オンライン学習の導入
オンライン学習プラットフォームを活用し、いつでもどこでも研修を受けられる環境を整えます。これにより、社員が自分のペースで学習できるようになります。
従業員向け研修と教育プログラムの導入により、企業は社員一人ひとりの意識を高め、風評被害の未然防止を図ることができます。
3-3.オンライン評判管理とモニタリングシステムの展開
企業の評判を守るためには、弁護士の助言を受けながらオンライン評判管理とモニタリングシステムの展開が重要です。以下にその具体的な方法を示します。
・モニタリングツールの導入
インターネット上の企業に関する言及やレビューをリアルタイムで監視するためのモニタリングツールを導入します。これにより、風評被害の早期発見が可能となります。
・評判管理チームの設置
専門の評判管理チームを設置し、モニタリング結果に基づいて迅速に対応します。チームは、問題の書き込みの評価、削除依頼の実施、対応方針の決定などを行います。
・定期的な報告と改善策の提案
モニタリング結果を定期的に報告し、経営層や関係部門と共有します。また、発見された問題に対する改善策を提案し、企業全体で対応を強化します。
オンライン評判管理とモニタリングシステムの展開により、企業は常に自身の評判を把握し、迅速かつ適切な対応を行うことで、ブランドイメージを維持し向上させることができます。
4.削除請求対応については弁護士にご相談を
企業がインターネット上の風評被害に対処する際は、まず専門の弁護士に相談することが重要です。弁護士は、発信者情報の開示請求や削除依頼の手続きをサポートし、必要に応じて訴訟の準備も行います。
また、社内ポリシーの策定や従業員向けの教育プログラムの導入についてもアドバイスを提供します。
初期対応を誤ることなく、企業のブランドイメージと信頼性を守るために、信頼できる弁護士に相談し、適切なサポートを受けましょう。
稲葉セントラル法律事務所の実績豊富な弁護士は、インターネット上の書き込みに関する法的な課題を理解し、適切な対策を提供することで、経営の安定化と成長をサポートします。
経営の課題や法的問題に直面した際は、私たちの専門知識と経験を活用して、最善の解決策を見つけてみませんか。
詳細については、お気軽にご相談ください。皆様の問題解決に全力で取り組みます。
Last Updated on 2024年6月26日 by kakikomi.iclaw
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この記事の執筆者:弁護士法人稲葉セントラル法律事務所 法律事務所でも誹謗中傷トラブルに遭うケースがありますが、弁護士として対応方法は分かっているものの、非常に大きなストレスを感じました。依頼者様への誹謗中傷の書込みを精査し対応する中、今でも誹謗中傷されたことに対し苦々しい思いを抱きます。この想いを抱く度、依頼者の方はもっと苦しんでいることを肌で感じ、なんとか今よりも良い状態にしよう、会社に損害が発生しないようにベストを尽くそうと強く思います。弊所では、これまでネット上の誹謗中傷問題に力を入れ、数多くの事件を解決して参りました。中でも、法人のお客様からのご依頼が多く、法人に対する誹謗中傷問題については、経験と問題解決のノウハウに強みを持っております。私たちは、投稿の削除に限らず、削除が難しい案件についても改善のため挑戦いたします。皆さまのストレスを少しでも減らすため、最善の解決方法を考えサポートいたします。 |