歯科医院でよくあるカスハラや対処法について弁護士が解説

1. カスハラとは 

カスハラとは、顧客や取引先からのクレームや言動のうち、要求の手段や態度が社会通念上不当で、従業員の就業環境を害するものを指します。 

2. 歯科医院でよくあるクレーム(カスハラ)事例 

①【治療契約の解約に伴うキャンセル料の支払いを説得した事案】 

審美目的の歯科矯正で契約した患者が、歯科医院の治療方針に対し不満を抱き、解約を申し出ました。 

しかし当該歯科医院ではキャンセルポリシーが用いられており、患者が解約を申し出た段階では約50万円のキャンセル料が発生することになっていました。 

これに対し患者が反感を示し、「消費者センターに相談する」との連絡がありました。 

当該歯科医院から相談を受けた弁護士は速やかに交渉を開始し、既にキャンセルポリシーに同意していること、治療計画書を作成していること等から説得を試み、キャンセルポリシーどおりの返金を行うことで合意しました。 

②【患者からの連日の電話を弁護士が止めた事案】 

歯科矯正で契約した患者が、歯科矯正費用を支払えなくなったため解約を申し出ましたが、治療が進行していたため、既に支払われた部分については返金できない旨回答したところ、電話で連日「返金しろ!」との要求が続きました。 

相談を受けた弁護士が、患者に対し通知文を送付し、今後は弁護士が窓口となるため歯科医院には直接連絡しないよう求めると、電話は止みました。 

その後も返金を求められることはなく、事態は収束しました。 

③ 【トラブルを予防する合意を行ったうえで治療継続した事案】 

歯科矯正で契約した患者が、解約を申し出たものの、全額返金することはできないとの回答に不満を示しました。 

患者は、返金されないのであれば解約せずに治療継続することを希望しましたが、歯科医院としては一度返金対応でトラブルとなった患者を治療し続けることに不安を覚え、このまま継続して問題ないか弁護士に相談しました。 

相談を受けた弁護士は合意書を締結することを提案し、今後カスハラ行為を行わないこと、歯科医院についての誹謗中傷をしないこと、もしこれらに反した場合には違約金として100万円支払うことで合意しました。 

このような合意をしたことで、歯科医院としても安心して当該患者の治療を継続することができました。 

3. 歯科医院が抱える問題  

① カスハラが受付に集中する 

カスハラの攻撃は、歯科医院の窓口に立つことが多い歯科助手などのスタッフに向けられてしまうことが多いです。 

連日クレームの電話が続くと、電話対応に追われ通常業務に支障をきたすだけでなく、対応にあたった受付のスタッフにも精神的負担がかかります。 

② 情報共有ができていない 

歯科医院では、歯科医師のほかに、歯のクリーニングを担当する歯科衛生士、受付のスタッフ等複数の従業員が患者に関与することになるため、情報共有がうまくできず、カスハラ対応にあたっても連携がとれないことがあります。 

③ 証拠が残らない 

治療中の会話や電話での対応など、歯科医院におけるやりとりは形に残らないものが多く、後から「言った、言わない」の争いが往々にして生じます。 

4. クレーム(カスハラ)の対処法  

① 合意書を交わす 

トラブルが発生したら、今後同じことが起きないよう、合意書を交わすことが好ましいです。もっとも、合意書の作成には法律の専門知識が必要になることが多く、専門家でないと見落としや不十分な合意内容になってしまうおそれがあります。 

② キャンセルポリシーを設ける 

特に矯正治療といった高額な契約を行う場合、契約のタイミングによっては返金できない場合があります。しかし患者としては返金を求めたいと考えるので、トラブルが発生しがちです。 

そのような場合に備え、あらかじめキャンセルポリシーを定め、患者からの同意を得ることがトラブル予防に効果的です。 

5. クレーム(カスハラ)で注意する点 

患者から要求があった場合、「これはカスハラに該当するのか」と瞬時に判断するのは非常に困難です。まずは患者の要求を丁寧に聞き取り、どこまでであれば対応できるのか、対応可能なラインを見極めることが重要になってきます。 

6. 終わりに 

カスハラ対応は困難なことが多く、専門家に依頼することで事案がスムーズに解決するだけでなく、従業員の精神的負担を取り除くことができます。 

「これってもしかしてカスハラかも?」と感じた場合は、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。 

Last Updated on 2025年11月10日 by kakikomi.iclaw

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    この記事の執筆者:弁護士法人稲葉セントラル法律事務所
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