Instagramは個人だけでなく、ビジネスコミュニティにおいて重要なツールとなりました。しかし、企業にとっては広く認知させるなど楽天的な成果だけではなく、複雑な問題も伴います。特に誹謗中傷問題は深刻な潜在的リスクとなっています。この記事では、これらの課題を弁護士が法的視点から深掘りし、解決策を提案します。
1. 誹謗中傷の法的定義と免責
誹謗中傷とは、他人の評判を毀損する行為を指します。不正確な情報や意図的な虚偽の情報を広めることで、他人の名誉を損なう行為と定義されています。
法的には、名誉毀損罪や侮辱罪などの刑事責任を問われる場合があります。また、民事訴訟を起こされて損害賠償を請求されることもあります。しかし、一部の特例が存在する場合もあります。
2. コメント投稿における企業への誹謗中傷と対策
Instagramは交流の場として人気がありますが、コメント機能が悪意あるユーザーによって企業への誹謗中傷や悪口の拡散に悪用されることも少なくありません。
企業が公開した投稿に対するコメントは全てのユーザーに見えるため、意図的に攻撃的な言葉や「パワハラが横行している」「あの商品は不味い」「脱税している」など偽の情報を投稿して企業を非難する行為は大きなダメージを与えることがあります。
このような行為は、企業の名誉を傷つけるだけでなく、その信用やイメージにも悪影響を及ぼす可能性があります。法的にも、これらの行為は名誉毀損となりうるため、法的な制裁を受ける可能性があります。
Instagramには投稿に残されたコメントを削除したり、投稿をコメントできないユーザーをブロックしたりする機能があります。
コメントを削除するには、「ゴミ箱」をタップすることで削除が完了します。
投稿をコメントできないユーザーをブロックするには、ユーザー名をタップして[ブロック]をタップします。
3. DM(ダイレクトメッセージ)での秘密裏の攻撃と対策
誹謗中傷は、公に見える場所だけでなく、DM(ダイレクトメッセージ)というプライベートな空間でコミュニケーションを可能にします。
しかし、この機能が誹謗中傷の手段として悪用されることがあります。特にDMは公開されたコメントと異なり、秘密裏に行われるため、対処が難しくなることがあります。
DMでの企業への誹謗中傷に対して、コメントに対する発信者情報の開示請求は通常適用できません。その主な理由は、DMがプライベートなコミュニケーションであり、特定のユーザー間でのみ共有されるため、プライバシーの保護が強く求められるからです。
そのため、裁判所はDMの発信者情報の開示を認めることは稀です。
対応策としては、まずDMによる誹謗中傷を受けた場合、そのメッセージのスクリーンショットを保存し、Instagramに報告することが重要です。Instagramはユーザー間のハラスメントを厳しく取り締まっており、報告を受けたアカウントは調査され、必要に応じて制裁がなされます。
さらに、特定のユーザーからのDMをブロックする機能も利用できます。これにより、企業のアカウントへの直接的な攻撃を防ぐことが可能となります。
しかし、これらの対策が十分でない場合、あるいは状況が悪化する場合、法的なアドバイスを求めることも重要です。弁護士などの専門家は、後述する具体的な状況に応じた適切な対応策を適宜提案できます。
4. ストーリーズでの悪用と対策
Instagramのストーリーズは、24時間限定で公開されるコンテンツを提供する機能です。
しかし、これが誹謗中傷を含む投稿の手段として利用されることもあります。
その特性上、一時的であることを利用して、攻撃的なメッセージを投稿し、消える前に大勢の人々に見せるというケースがあります。
DMと同様に、ストーリーズでの誹謗中傷に対処するためには、まずそのストーリーのスクリーンショットを撮って証拠を保存し、Instagramのユーザー報告機能を利用してそのストーリーを報告することが重要です。
しかし、これらの対策が十分でない場合、あるいは状況が悪化する場合、法的なアドバイスを求めることも重要です。特に、ストーリーズの性質上、開示請求の手続きが困難であることを考慮に入れた上で、DMと同様に、弁護士などの専門家の助けを借りることが有効な手段となります。
5. Meta社への削除依頼
誹謗中傷的な投稿やストーリーズ上で見つけた場合、ユーザーは運営元であるMeta社 (旧称Facebook社)に依頼することができます。ここでは、その手順と注意点について解説します。
(1)投稿の報告
まずは投稿を報告します。Instagramアプリ内には各投稿やストーリーズ、DMに「報告」機能があります。投稿の右上にある[・・・]をタップし、「報告」をタップし、さらに「投稿を報告する理由」を選択することで、ガイドラインに違反していることをInstagramに知らせます。
(2)アカウントの削除依頼
相手のプロフィールページに移動し、右上にある[・・・]をタップし、さらに「報告する」をタップすると「報告の対象は?」が表示されるので、「このアカウント全体」を選択します。「このアカウントについての報告内容」が表示されるので、誹謗中傷などを報告する場合は、「その他」を選びます。
(3)補足
Instagramは定期的にバージョンアップや規約等を変更するため、法的手段に入る前にコミュニティガイドラインや利用規約を確認してください。
6. 開示請求の流れ
会社のInstagramで誹謗中傷された場合、投稿者を特定するために「発信者情報開示請求」ができます。
発信者情報開示請求とは、インターネット上での違法な情報の投稿者に対して、その個人情報を開示するよう求める手続きです。Instagramで発信者情報開示請求を行う場合の流れは以下のとおりです。
(1)プロバイダに開示請求を行う
Instagramを運営するMeta社に対して、開示請求を行います。開示請求を行うためには、投稿内容が違法であることを立証する必要があります。
(2)プロバイダが開示に応じない場合は、裁判所に訴訟を起こす
Meta社が開示に応じない場合は、裁判所に訴訟を起こして開示命令を取得する必要があります。
(3)裁判所が開示命令を出した場合は、Meta社は投稿者の個人情報を開示する
また発信者情報開示請求については、2022年10月に改正プロバイダ責任制限法が施行されました。
改正プロバイダ責任制限法では、発信者情報開示請求がより簡単に行えるよう、手続きが簡素化されました。
改正プロバイダ責任制限法の概要は以下のとおりです。
- 発信者情報開示請求がより簡単に行えるよう、手続きが簡素化
- 特定電気通信役務提供者の義務が強化
- 投稿内容が違法であることを立証するハードルが下げられた
- 裁判所による開示命令の基準が明確化
改正プロバイダ責任制限法は、誹謗中傷や名誉毀損などの被害にあった被害者の権利をより強く保護するためのものです。
発信者情報開示請求は、誹謗中傷や名誉毀損などの被害にあった場合に、投稿者を特定するための有効な手段です。しかし、手続きが煩雑で費用もかかるため、弁護士に相談することをお勧めします。
7. 刑事訴訟と民事訴訟について
誹謗中傷行為は名誉毀損罪として刑事訴訟の対象となることがあります。また、企業の損害を補償するための民事訴訟を行うことも可能です。
刑事訴訟
企業が名誉毀損や脅迫に関して刑事訴訟を起こすことは、個人がそのような訴訟を起こす場合と基本的には同じです。
ただし、企業の名誉が毀損されたと主張するためには、その毀損行為が企業の商業的な評価や信用に害を及ぼしたことを証明する必要があります。
民事訴訟
企業は、名誉毀損によって生じた損失について損害賠償を請求することができます。これは、企業の商業的評価や信用が毀損された結果、収益が減少した場合などに該当します。
また、企業は謝罪広告の掲載や名誉回復のための行為を求めることもできます。
免責事項
事実の公表や意見の表現、公の利益に関する免責事項も、誹謗中傷において適用される可能性があります。
ただし、これらの免責事項は一般的に厳格に解釈され、特に企業に対する誹謗中傷の場合、その企業が公共の関心事であるかどうかなど、特定の要素が考慮される可能性があります。
まとめ
表現の自由は基本的な人権の一つですが、それには限界があります。誹謗中傷と許される批評の境界については慎重な考慮が必要で、その範囲を正しく理解することが企業のインターネット使用における重要なスキルとなります。
誹謗中傷のリスクを適切に管理し、法的な問題を未然に防ぐためには、適切なインターネットリテラシーが求められます。今回説明した知識と対策を活用し、企業のインターネット活用をさらに安全で効果的なものにしていきましょう。
稲葉セントラル法律事務所では法的手続きや和解交渉のサポート、損害賠償請求の実現において専門的な知識と経験を活かして、問題解決に向けた適切なアドバイスを提供します。
また顧問契約も行なっているため、持続的なサポートの提供ができます。
見積もり依頼は無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。
Last Updated on 2024年7月4日 by kakikomi.iclaw
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この記事の執筆者:弁護士法人稲葉セントラル法律事務所 法律事務所でも誹謗中傷トラブルに遭うケースがありますが、弁護士として対応方法は分かっているものの、非常に大きなストレスを感じました。依頼者様への誹謗中傷の書込みを精査し対応する中、今でも誹謗中傷されたことに対し苦々しい思いを抱きます。この想いを抱く度、依頼者の方はもっと苦しんでいることを肌で感じ、なんとか今よりも良い状態にしよう、会社に損害が発生しないようにベストを尽くそうと強く思います。弊所では、これまでネット上の誹謗中傷問題に力を入れ、数多くの事件を解決して参りました。中でも、法人のお客様からのご依頼が多く、法人に対する誹謗中傷問題については、経験と問題解決のノウハウに強みを持っております。私たちは、投稿の削除に限らず、削除が難しい案件についても改善のため挑戦いたします。皆さまのストレスを少しでも減らすため、最善の解決方法を考えサポートいたします。 |