建設業は法的な課題が多く、その解決には専門知識が必要です。本記事では、その特性を踏まえ、弁護士の重要性と、彼らがどのように問題解決に取り組むかを紹介します。また、顧問弁護士を通じた解決のメリットや、依頼に際しての費用や実績についても触れます。業界特有の問題を解決するための具体的な事例を交えながら、専門的なサポートについて詳しく見ていきましょう。
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1.建設業における法務対応の重要性と弁護士のアドバイスがもたらす経営への影響
建設業界の事業活動は多岐にわたり、その各段階で法的な問題が生じる可能性があります。具体的には、プロジェクトの設計から施工、完成までの過程で、建設契約の紛争、労働法に関する課題、工事に関連した事故などが生じうるのです。これらの問題が発生すると企業の経営に大きな影響を及ぼし、法務対応の重要性を一層高めます。
特に、建築基準法や下請法のような専門的な法律領域については、その適切な理解と運用が求められます。こうした状況下で、弁護士との連携は企業にとって極めて価値あるものとなります。弁護士は適切な法的対応を通じて、企業の法的リスクを最小化し、事業の適法性を保つためのサポートを提供します。
さらに、法的問題の予防という観点からも、弁護士の役割は重要です。彼らは法改正の情報提供、コンプライアンスの強化、リスク対策のアドバイスなどを通じて、企業がリスクを事前に把握し、対策を立てることができるようサポートします。このように事前のリスク管理を行うことで、企業は将来的なトラブルを未然に防ぐことが可能となります。
また、万が一クレームや紛争が発生した場合でも、弁護士はその対応をサポートします。適切な対応をとることで企業の信用を保ち、さらなるトラブルの発生を防ぐことが可能となります。
したがって、建設業界において弁護士との協力関係は、法的問題の予防から発生後の適切な対応まで、幅広い面で極めて重要な役割を果たします。このような観点から、適切な法務対応のために弁護士との連携が求められます。
2.建設業でよくあるトラブル4つと対処法
建設業における法的な問題は多岐にわたり、その対応は、会社側の管理体制や法務チームの能力、外部の専門家(弁護士)との協力関係により大きく影響されます。以下では、会社側の対応と弁護士の対応を示します。
①建設契約紛争:
建設契約は多額の金額が関わるため、契約内容の不一致や解釈の相違から紛争が生じることがあります。
・会社側の対応:
企業側としては、契約の段階で法務部門や外部の弁護士と連携し、契約書の作成やチェックを行います。
また、トラブルが発生した場合には、法務部門が主導して事実関係を整理し、必要な対策を検討します。
・弁護士の対応:
弁護士は民法、建築基準法や下請法等の関連法令を参照しながら契約内容の適法性をチェックし、潜在的なリスクを事前に洗い出します。
紛争発生時には、事実関係や証拠状況を踏まえた上で、訴訟、調停、交渉などの適切な対応を提案します。必要に応じて、法廷での代理人として活動し、クライアントの権利を保護します。
②建設事故
工事現場での事故は、労働者の安全や企業の信用に直接影響を与えるだけでなく、事故の原因や責任の所在により法的な問題を引き起こす可能性があります。
・会社側の対応:
企業としては、安全管理体制を強化し、事故を未然に防ぐことが最も重要です。事故が発生した場合には、速やかに事故の原因を調査し、再発防止策を立てます。
また、労働基準監督署への届出や、被害者への補償など、法律上の義務を遵守します。
・弁護士の対応:
弁護士は、事故原因の調査や被害者との交渉、裁判所や行政機関との対応などをサポートします。特に、労働基準法などの雇用主に課せられた法的な義務や労災保険給付などの手続きについて、企業側を指導します。
また、事故による損害賠償訴訟が提起された場合には、証拠の収集や証人尋問を含む期日対応などを通じて、企業側の立場を代弁します。
③遅延損害金問題
建設プロジェクトは、予定通りに進まないと遅延損害金が発生する可能性があります。原因が自然災害や下請け業者の問題など、自社の責任範囲外の場合でも、契約により遅延損害金を負担しなければならない場合があります。
建設会社は、予見可能なリスクを契約段階で明確にし、納期の延長や遅延損害金の免除などを契約に盛り込むことが求められます。
また、プロジェクト管理を強化し、遅延のリスクを最小限に抑えることが重要です。
・弁護士の対応:
弁護士は、契約の交渉段階で遅延リスクを評価し、適切な条項の盛り込みを支援します。遅延が発生した場合、弁護士は契約内容と事実関係を基に、遅延損害金の有無や計算方法を判断します。
また、必要に応じて交渉や訴訟の支援を行います。
④契約不適合責任
建物に欠陥があった場合、建設会社は修理費用を負担したり、建物を修繕するなどの責任を負う場合があります。。しかし、欠陥の原因や程度、発見時期などにより、具体的な責任の所在や負担額は異なります。
・会社側の対応:
建設会社は、品質管理を徹底し、欠陥の発生を防ぐことが求められます。欠陥が見つかった場合には、速やかに適切な賠償や修繕を行うとともに、顧客とのコミュニケーションを密にすることが重要です。
・弁護士の対応:
弁護士は、欠陥の原因や程度、発見時期などを調査し、建設会社の法的な責任を評価します。
その上で、交渉や訴訟が避けられない場合は、窓口となって相手と交渉をしたり、少しでも有利になる様、証拠を収集や主張書面の提出等の対応をします。
一方、欠陥の原因が下請け業者や材料供給業者にある場合には、建設会社の代理人として、彼らに対する請求を支援します。
3. 建設業でよくある口コミトラブル
建設業でよくある口コミトラブルには「顧客とのトラブル」と「従業員(退職者)とのトラブル」が存在します。以下に具体的なトラブルを記載したうえで対処法を解説いたします。
3-1.顧客と建設業者の観点でのトラブル
■具体的なトラブル事例
・ある顧客が自宅のリフォームを依頼したが、工事後に壁に亀裂が生じたため、Webサイトに「この業者の施工は粗悪だ」という口コミを投稿した。
・別の顧客が新築工事の進行が遅れたことに不満を持ち、「工期が守られない」とSNSに投稿した。
・工事完了後に追加費用を請求された顧客が、「契約時には説明されなかった」とオンライン掲示板に書き込んだ。
■弁護士としての対応の流れ
投稿内容が事実に基づくかどうかを調査し、事実に基づかない場合は、証拠を揃えて削除を要求する事実確認の対応や事実に基づかない誹謗中傷の場合、法的措置として名誉毀損の訴訟を起こし、投稿者に対する損害賠償請求を行うことが可能です。法的手続き以外にも、顧客と建設業者との間での和解を目指し、話し合いの場を設けることで、問題の早期解決を図ります。
3-2.元従業員と建設業者とのトラブル
■具体的なトラブル事例
・退職した従業員が、「この会社は安全管理が不十分だ」とブログに投稿した。
・元従業員が、勤務環境の劣悪さや賃金未払いについてSNSで告発した。
・元従業員が、企業の不正行為(例えば、環境規制違反)について匿名で転職サイトに投稿した。
■弁護士としての対応
投稿内容が企業の機密情報に該当する場合、情報の保護と削除を求めるための法的措置を講じたり、従業員との労働条件に関するトラブルについては、労働法に基づき適切な対応を取り、元従業員との話し合いや調停を進めます。またトラブルに至った経緯を整理し、包括的なサポートをすることも可能です。場合によっては企業の評判を著しく損なう不正確な情報に対して、名誉毀損や不正競争防止法に基づく訴訟を検討します。
4.弁護士に求められる主な業務とメリット
4-1. 弁護士の主な業務
弁護士の主な業務は、建設工事や元請け・下請けとの間の契約書の作成、企業の法務に関する相談、紛争解決のための交渉、そして訴訟のサポートなどを含みます。
これらの活動は、会社の法的リスクを管理し、予期せぬトラブルや金額的な損失から企業を守る助けとなります。さらに、彼らが持つ幅広い業界経験と実績は、様々な業種の問題に対応するための可能性を広げ、より具体的な対応方法を提案できます。
弁護士のサポートを活用することで、企業は安全に事業を運営し、その成長を支援することが可能となります。
4-2. 問題発生前の防止策:弁護士の提案がもたらす4つのメリット
①専門知識と経験に基づく法的対策の提案:
弁護士は、請負契約や契約不適合責任といった民法上の知識に留まらず、下請法や建設業法などの広範な分野について深い知識と経験を有しています。企業経営における法的な問題は多岐にわたるため、これらの知識は必要不可欠です。とりわけ、建築業の分野では、多くの立場の人々が取引に関与するため、全体像を把握し、トラブルが生じないように、常時適切な対応をする必要があります。このような対応は、建設業の分野に精通した弁護士でなければ対応は困難です。
②業界の最新情報に基づくアドバイス:
法律は日々変化し、その適用は具体的な事例や事業領域によって異なる場合があります。弁護士は、建設業界の最新の法律や判例を把握し将来的なトラブルを未然に防ぐアドバイスを提供します。
③老朽化・環境問題への対策:
建物の老朽化や環境問題は、建設業界にとって避けては通れない課題です。建物が老朽化して初めて見つかった瑕疵や、建設当時は合法であったものの、後に環境や人への健康被害を踏まえて法律で使用禁止となった素材で建築を行っていた場合など、建設後に法的な問題が生じることも少なくありません。専門家である弁護士のアドバイスにより、どのようなときに法的責任を負うのか判断することが可能となりますし、事後的に使用が禁止され、問題になる素材を利用していた場合等では、専門家である弁護士が定期的にアナウンスをすることで、問題を未然に防ぐこともできます。
④目標達成に向けた最適な解決策の提供:
企業が抱える法的な問題は、その業務や目標に深く関連しています。弁護士は、企業の具体的な状況や目標を理解した上で、最適な解決策を提供します。これにより、企業は法的な障害を回避しながら、自身の目標に向けて進むことが可能になります。
これらの防止策は、企業が法的な問題を未然に防ぐための強力なサポートとなります。そのため、企業は法律問題が発生したときだけでなく、日々の業務においても弁護士との緊密な連携を保つことが重要です。
5.顧問弁護士を選択する更なるメリット
ここまで弁護士の対応については説明しましたが、一回限りの弁護士相談よりも顧問弁護士と契約することで、さらなるメリットを享受することができます。
その主な理由の一つは、顧問弁護士と契約することで、知識を常に最新の状態にアップデートし、トラブルを未然に防ぐことが出来るということです。トラブルが実際に生じた後では、どうしても対応できることの幅は少なくなってしまい、かつ、賠償責任を免れられないことも少なくありません。この分野に精通した顧問弁護士と予め契約をしておくことで、トラブルを未然に防止し、企業の損失を避けることが可能となります。
さらに、顧問としての役割は、契約締結から請求、訴訟まで、企業が遭遇する可能性のある法的問題全般をカバーします。また、専門的なサポートは、豊富な実績と経験を活用して、具体的な対策を提供します。こうした弁護士の活動は、企業が主要な業務に専念できる環境を作り出し、企業の成長を支援します。
以上のように、専門的なサポートを持続的に利用することは、企業が安心して事業を運営するための強力な支援となります。
稲葉セントラル法律事務所の実績豊富な弁護士は、建設業の法的な課題を理解し、適切な対策を提供することで、経営の安定化と成長をサポートします。
経営の課題や法的問題に直面した際は、私たちの専門知識と経験を活用して、最善の解決策を見つけてみませんか。
詳細については、お気軽にご相談ください。皆様の問題解決に全力で取り組みます。
Last Updated on 2024年7月4日 by kakikomi.iclaw
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この記事の執筆者:弁護士法人稲葉セントラル法律事務所 法律事務所でも誹謗中傷トラブルに遭うケースがありますが、弁護士として対応方法は分かっているものの、非常に大きなストレスを感じました。依頼者様への誹謗中傷の書込みを精査し対応する中、今でも誹謗中傷されたことに対し苦々しい思いを抱きます。この想いを抱く度、依頼者の方はもっと苦しんでいることを肌で感じ、なんとか今よりも良い状態にしよう、会社に損害が発生しないようにベストを尽くそうと強く思います。弊所では、これまでネット上の誹謗中傷問題に力を入れ、数多くの事件を解決して参りました。中でも、法人のお客様からのご依頼が多く、法人に対する誹謗中傷問題については、経験と問題解決のノウハウに強みを持っております。私たちは、投稿の削除に限らず、削除が難しい案件についても改善のため挑戦いたします。皆さまのストレスを少しでも減らすため、最善の解決方法を考えサポートいたします。 |