EC・通販業界の法務問題と顧問弁護士の役割
ネットショップや通販ビジネスの急速な拡大に伴い、法律も環境の変化に対応してきました。
例えば、特定商取引法は、通販・ネットショップの運営者が遵守すべき義務やルールを定めています。また、個人情報の取り扱いに関しては、個人情報保護法などが重要な役割を果たしています。
ネット広告などに関しても、知的財産権の観点から、著作権法といった法律が適用されています。これらの法律を無視した運営は、法的トラブルや顧客からのクレームの原因となり得ます。
ネットビジネスを運営する際、これらの法律知識は、通販・ネットショップビジネスをスムーズに、かつ法律を遵守して運営する上で不可欠です。
今回はEC・通販業界の法務問題と弁護士の役割や依頼するメリットについて詳しく解説します。
1. EC・通販業界における法務のポイント
1-1. EC・通販業界に特有の法務問題とその背景
EC・通販業界には、特有の法務問題があります。そのため、その背景を理解することは、ビジネスの成功につながります。これらの問題に対応する上では、法律の専門知識を持つ弁護士の支援が、必要となります。
通販の運営では、商品の取引から返品までの流れにおいて多くの法律問題が絡みます。例えば、広告表示に関する規制に対応するための適切な商品説明、法律に基づく適切な取引の履行等。こうした問題は、ビジネスの規模が拡大するにつれて複雑化します。
また、オンラインでのビジネス展開は、顧客との円滑な接客や在庫品の管理など、運営上対応する項目は様々あります。経営者自身がこれら全てを把握して、対応することは困難なため、弁護士の専門的な支援が必要となることもあります。
1-2. 特定商取引法(特商法)とは:EC・通販事業者の法的義務と消費者保護
通信販売業には、その運営や取引に関わる法律が様々存在します。
具体的には、特定商取引法があげられます。
特定商取引法は、法律において、特定商取引と定められている取引を公正にして、購入者等の消費者が被る損害を防止することにより、消費者を不当な取引から守ることを目的とした法律です。法律において特定商取引は、訪問販売や通信販売などの取引が対象とされています。
以下は、特定商取引法の主なポイントを解説します。
・広告に関する規制
販売業者等は、商品等に関する広告をする場合、商品やサービスの重要な情報(価格又は対価、商品の性質、支払い方法など)を正確に、そしてわかりやすく表示する義務があります。
・クーリングオフ制度
一定の商品やサービスに関して、契約した後に、消費者が一定期間内に契約を解除できる権利が保障されている制度です。
・不当な広告・勧誘の禁止
事業者は、消費者を誤認させるような広告や不当な勧誘に関する規制についての内容もあります。
また、2022年6月1日に特定商取引法が改正されました。改正の目的は、消費者の保護を図ることや通信販売に関する規制を強化することです。主な改正点は以下のとおりです。
・クーリング・オフの通知方法について、電磁的方法による通知の追加
・定期購入に関する規制
・送り付け商法に関する規定の整備(商品の処分に関する改正)
特定商取引法の改正によって、、消費者の被害を防ぐといった、消費者保護がより図られています。
消費者の信頼を獲得し、ビジネスの成功につなげるためにも、事業者にとっては、特定商取引法を理解し、その内容を遵守することは必要なこととなります。
1-3. ネットショップの運営における主要な法律5つ
ネットショップを運営するにあたっては、特定商取引法だけでなく、他にも関わり得る法律が存在します。以下、関わり得る法律を簡単に列挙し、紹介します。
①消費者契約法
この法律は事業者との間で取り交わされる不当な取引行為から消費者を守ることを目的としています。消費者にとって不当に不利益となる取引に対して、消費者に一定の権利を認める内容が盛り込まれています。通販の契約時にも適用され、事業者はこの法律の内容を把握する必要があります。
また、2023年6月1日、消費者契約法が改正されました。改正の主な内容は以下のとおりです。
・契約の取消事由の追加
・不当条項の無効化
・事業者側における努力義務の強化
消費者が契約を取り消すうえで、取消事由が増えました。追加された取消事由は、消費者が契約締結時に不当な勧誘行為を受けた場合、契約を取消すことができるようになりました。
また、不当条項の無効化では、賠償請求に関して、免責範囲が不明確となっている条項は無効とされることになりました。
さらに、事業者側における努力義務の強化では、事業者において、消費者に対し解約料の説明(解約料の算定など)をする努力義務を負うようになりました。
②個人情報保護法
通販業界に限ったものではないですが、事業者においては大量の顧客情報を扱うこととなることは多いです。そのため、この法律は特に重要となります。この法律には、個人情報の取得、利用、提供の際のルールや、適切な管理方法などについて定められています。
③著作権法
通販サイト等で著作権法が関連するものとしては、通販サイト等で使用する画像やテキストなどが問題になることがあります。
④不正競争防止法
営業の秘密の保護など、事業者間の公正な競争を確保することを目的とする法律です。営業に関する情報の不正に取得することや使用すること、業務上の秘密を漏洩することを防ぐためのルールが定められています。
⑤景品表示法
商品・役務の取引における表示や景品類に関するルールを定めた法律となります。この法律では、消費者が誤解を招くような表示などを禁止しています。
2. EC・通販業界特有のトラブルとその対応策
2–1. EC・通販業界での典型的なトラブル:その発生原因
EC・通販業界は、ネットを通じて商品やサービスの取引を行うことから、様々なトラブルが発生する可能性があります。
トラブルの一つとしては、商品の購入取引後の返品・キャンセルに関する問題です。
また、特定商取引法などの法律に関する規制や規約の不適切な管理などもトラブルの原因となり得ます。
このような問題を未然に防ぐためにも、適切な法律知識と顧客対応の方法が求められます。
2-2. 違反の予防:対策と管理戦略
EC・通販業界における業務は、大量の個人情報を取り扱うため、取得した情報を適切に管理することが求められます。
個人の情報を不正に取得することや第三者へ提供することは、消費者の権利を侵害してしまい法律に違反することにもなりかねません。対策としては、取得したデータの利用目的を明確に定め、それを超えた利用や加工を行わないよう注意することが必要です。
また、情報を保有する際は、適切な安全対策を実施し、情報の漏洩などがないようにするだけでなく、不正アクセスや改ざんを防ぐ措置を取るべきです。
事業者は、法律の規定内容や改正内容を確認し、それに基づいて情報を取り扱うことを心掛ける必要があります。
また、個人情報保護法に基づいて、個人情報の取扱いを委託するという場合には、委託先の選定や、委託先における安全管理措置を法が求める水準まで講じているかなどを確認すること、監督義務などを果たす必要があります。
通販業界に特有のトラブルを防ぐための管理戦略として、法令遵守の取り組み強化、そして消費者との適切なコミュニケーションが不可欠となります。
2-3. 商品取扱いや配送に関連したトラブル
ネットショップ運営の中で特に商品の取扱いや配送に関するトラブルは様々あります。
例えば、消費者が注文した商品について、破損して届いてしまった、あるいは発注内容と異なる商品が届いてしまったといった問題が生じることがあります。
また、配送の遅延や商品が全く届かない場合、顧客からの返品・返金請求が発生することもあります。
これらの問題に対する対応として、まずは問題が発生した原因を確認し、消費者(お客様)への適切な対応を取ることが重要となります。そして、問題に対して、取り得る対応を素早く行い、今後のトラブルを防ぐための対策を検討すべきです。
法的観点での問題点などがあるかなども確認し、トラブルへの対応や対策を考えて、安定したサービスの提供が行えるように、弁護士などに相談することも考えられます。
安全で信頼の置けるサービス提供を心掛けることで、顧客満足度を向上させ、事業の発展につなげることが考えられます。
2-4. 顧客からの口コミトラブル
インターネットの普及により、ECサイトや通販業界は顧客との直接的な接点を持つ重要なビジネスモデルとなりました。しかし、この進展は口コミトラブルという新たな法的課題も生んでいます。
EC・通販サイトの構成要素として、「顧客による口コミ」が挙げられます。
商品のブランディングは顧客が商品を選ぶ際に非常に重視されますし、販売側も口コミへかなりのリソースを割いて取り組むケースが増えています。
そのような中、具体的な口コミトラブルとしては「虚偽のレビュー内容」「カスタマーハラスメントとも捉えられる書き込み」「特定のサービス、人に対する誹謗中傷」などが挙げられます。消費者契約法、不正競争防止法、著作権法など、多くの法的枠組みが口コミトラブルに適用される可能性があります。企業はこれらの法律を理解し、適切な対応策を講じることが重要です。具体的には、不正な口コミに対する削除請求、法的措置を含む対抗策の策定、消費者とのコミュニケーションの強化などが挙げられます。
3. 顧問弁護士の役割と重要性と業界への貢献
オンラインの取引が増えれば、企業の法的トラブルは発生する可能性も多くなり、日常的に社内のリーガルチェックを行っている顧問弁護士の役割が非常に重要になってきます。
会社の顧問弁護士は、法律の専門的な知識を持つだけでなく、顧問先のビジネスを把握しており、会社のビジネススタイルや業界特有の慣習に合わせた法務部門のサポートをし、リーガルチェックや法的観点からのアドバイスや対応策を提供します。
特に中小企業にとって、継続的な法律の専門家がいることは、トラブルを事前に防止し、問題が生じた時には、迅速に対応し損害を最小限にするための大きな武器となります。
4. 企業が顧問弁護士を依頼するメリット
通信販売などネットでの取引が進んでいる中で、消費者と事業者との間では、法的問題や紛争が生じることがあります。また、事業を運営する上で関連する法律との関係や個人情報の取り扱いなど、法的な知識を必要とする点もあります。
そんな中、弁護士は、事業に関連する法律の確認や問題への対応・対策など必要に応じてアドバイスを行うなど、事業運営を安全に行うことや消費者との間における取引の安全性を高める役割を果たします。そして、顧問弁護士となることで、持続的に事業におけるサポートを行うことができることとなります。
また、個人の情報に関する法的問題もあります。
このようなビジネスの環境においても、顧問弁護士は企業の安全な事業の遂行をサポートする重要な役割を果たしていきます。
稲葉セントラル法律事務所の実績豊富な弁護士は、EC・通販業界の法的な課題を理解し、適切な対策を提供することで、経営の安定化と成長をサポートします。
経営の課題や法的問題に直面した際は、私たちの専門知識と経験を活用して、最善の解決策を見つけてみませんか。
詳細については、お気軽にご相談ください。皆様の問題解決に全力で取り組みます。
Last Updated on 2024年5月13日 by kakikomi.iclaw
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この記事の執筆者:弁護士法人稲葉セントラル法律事務所 法律事務所でも誹謗中傷トラブルに遭うケースがありますが、弁護士として対応方法は分かっているものの、非常に大きなストレスを感じました。依頼者様への誹謗中傷の書込みを精査し対応する中、今でも誹謗中傷されたことに対し苦々しい思いを抱きます。この想いを抱く度、依頼者の方はもっと苦しんでいることを肌で感じ、なんとか今よりも良い状態にしよう、会社に損害が発生しないようにベストを尽くそうと強く思います。弊所では、これまでネット上の誹謗中傷問題に力を入れ、数多くの事件を解決して参りました。中でも、法人のお客様からのご依頼が多く、法人に対する誹謗中傷問題については、経験と問題解決のノウハウに強みを持っております。私たちは、投稿の削除に限らず、削除が難しい案件についても改善のため挑戦いたします。皆さまのストレスを少しでも減らすため、最善の解決方法を考えサポートいたします。 |